小林 繁
理論で勝負した細腕エース 小林 繁
週ベ読者にはもはやおなじみの「野球つくONLINE」がさらにパワーアップ! 基本プレイを誰でも気軽に、しかも無料で楽しめる 「プロ野球チームをつくろうONLINE2」として生まれ変わった。 そこで今回は巨人、阪神のエースとして大活躍した小林繁氏が登場。 ゲームを楽しんでいただくとともに、“投手・小林繁”が駆使した理論などについても語っていただいた。
実際に試合まで体験していただきました。
- 小林
- 見事な大敗。
自分で配球できれば、こんなには点を取られないんだけどね(笑)。
これら基本サービスが、すべて無料で楽しめるんです。
- 小林
- それはいいですね。
僕はすぐ「こうすればさらに面白くなる」ってアイデアを考えちゃうんですよ。
この「野球つくONLINE2」でも思いついちゃった。
ぜひアドバイスをお願いします。(と、ここからしばらくは秘密のアドバイス……)ありがとうございます!
今後のサービスの参考にさせていただきます。
- 小林
- はははっ、ご参考になれば(笑)。
このゲームは文字通り、実在の選手を駆使してチームをつくり、勝利を目指すわけですが、小林さんも近鉄の投手コーチとして優勝を経験されました(01年)。
- 小林
- 最低の防御率でね(笑)。
あの年の近鉄の防御率は4.98で12球団最低。
得失点差が25で、18も貯金したのだからいかに首脳陣が上手くまわしたかってことです(笑)。
もちろんその通りですよ。
- 小林
- 僕はすごい人数の投手を起用したけど、それはやっぱり、投手の能力が高くなかったから。
投手が投げるボールの中で失敗確率は70パーセント以上。
いい投手でそうなのだから、力の劣る投手に多く投げさせたら、その確率がどれだけ増えるか。
であれば5球にして、うち2球いいボールが来れば抑えることができる、そういう考え方です。
投手コーチの技量はチーム防御率で判断されるけど、その自分の数字を犠牲にすればいい。
投手王国では黙っていても数字はよくなるけど、悪い中でどうするかが腕の見せどころ。
胃が痛くなったけど、選手もよく頑張ってくれたし楽しかった。
あの投手陣でまわせた秘密は?
- 小林
- 先入観を持ちすぎないこと。
もう峠を過ぎたとか、事前の情報だけですぐに決めつけちゃったら、そこまでです。
力を把握した上で何を任せられるのか、普段から話をしたり、練習の姿、体調を見て考えることですね。
「野球つくONLINE2」でも、コストが低いからと使わずにいた選手が、実は意外な活躍をすることもあります。
- 小林
- 人間は変われるものだから。
選手個々で適正も違うし、その状況をつくってあげることです。
自分の役割を与えてあげる。
例えば僕は、柴田佳主也という左のサイドハンドをよく使ったけれど、彼は力量も精神も弱い部分があった。
でも97年に僕がコーチになり、二軍から上げたら、そこから毎年40試合前後投げた。
ただ、僕は能力を分かっていたので、球数限定のワンポイントにしたんです。
それが功を奏したんですね。
- 小林
- ちょっと調子がいいからと長引かせたら、アラも見えてきてしまうものだし、
失敗すれば選手も自信を喪失する。
だからコーチってのは、言葉は悪いけどいかに人をノセて、騙すかって部分も多いんですよ(笑)。
選手のフォームをいじりたがる指導者も意外といますよね。
- 小林
- 根本的な問題があれば仕方ないけれど、そうでなければ考え方を教えたほうがいい。
ホームベースの大きさだけを考えて投げている投手がいて、
ストライクゾーンのどこを攻めるかだけしか考えないんです。
でも投手は、マウンドからの18.44メートルでも勝負ができる。
コースはど真ん中でも、18.44メートルの間でタイミングを外せば、いくらでも勝負になりますから。
僕も先発になって、ゾーンの勝負から18.44の勝負に変えたんですよ。
深いですね。そこでぜひ、小林さんにも「野球つくONLINE2」にレジェンド選手として復活していただきたいのですが……。
- 小林
- えっ、嫌だよ。
オレから見て、小林って投手はたいしたことない投手だったもん。
いえいえ、そんなことないですよ。ユーザーからのリクエストも高いんです。
- 小林
- そうなの?
そうなんです。再現させるためにもぜひ、いろいろ教えてください。あの独特の投球フォームはプロ入り後からですか。
- 小林
- 高校3年の時にヒジを壊して横気味に投げるようになり、社会人ではアンダースロー。
でもプロでは落ちる球が投げられないとダメだと言われて、あのフォームが自然に生まれた。
そうしたらフォークもシンカーもよく落ちるようになったんです。
フォームで注意していた点は?
- 小林
- 二段モーションにならないように、左足を上げて止めているんだけど、
ちゃんと右ヒザは沈み込むように前に出ようとして動いている。
それをコントロールできるのがパワーポジション。
実はそれが、いまの投手に一番できていないところなんです。
身体能力がないとできないでしょう。
- 小林
- いやいや、パワーポジションに戻すことは簡単なんです。
みんなそこに戻ろうとしないから、軸足の力が使えないんです。
それは感覚的にできたんですか?
- 小林
- 最初は感覚的ですね。そこから考えて、理論化したんです。
アンダースローは潜って上半身を曲げますよね。
身体の支点が「くの字」になるから、大きな幅を回転させねばなりません。
でも僕の投げ方だと、足は折ってもまっすぐ立っているから、小さな回転でもスピード感が出せるんです。
もともと僕は体力がなかったから、小さな回転のほうが合っていたんですよ。
それに伴い、腕の角度もいい位置に自然とおさまったわけです。
では球速はどのくらい?
- 小林
- 速くて140キロぐらいでしょ。
えっ!? もっと速く感じましたが。
- 小林
- それは腕が見えなかったからだと思う。
右腕が身体に巻き付くから見えづらい。
そうなったのもたまたまです。
体力がないから、普通のサイドスローのようにはならなかった。
小林さんと同じ投げ方をした人は……。
- 小林
- いないね。もの真似する人は大勢いましたけど(笑)。
結局それは、パワーポジションって理論を知らないとできないことだから。
まぁフォームは違っても、理論を受け継ぐ人は出てほしいとは思いますよ。
その理論を一番体現された方は?
- 小林
- クマ(岩隈久志)だね。彼は肩がルーズだったので、負担がないように腕が巻き付く投げ方にさせたんです。
腕をムチのように使えば力はいらないから。
本人も試行錯誤あったと思うけど、いまもちゃんと遅れて腕が出ている。
今季は復調したしよかったよね。
あと現役時代の球種ですが。
- 小林
- カーブ、シンカー、スライダー、フォーク。
あとチェンジアップは遊び球です。
実は「見せ球」って言葉を初めて使ったのが僕なんです。
見せ球は球種の比率をバランスよく見せる、例えばスライダーで意識させてからシュートというように、
決め球の効果を上げるものですが、僕はデータにしたら四隅に投げ分ける能力もそれほど高くなかった。
だからたいしたことない投手なんです。
でもその見せ球で、甘い球をいかに効果的に見せるかという術に長けていたわけです。
いやぁ、本当に興味深い。小林さんを完全再現して、ぜひ小笠原道大選手や中村紀洋選手などと対戦させたいですね。
- 小林
- いやいや、もう考えただけで嫌だよ。
彼らのすごさは分かっているから(笑)。
- 小林 繁(こばやし・しげる)
- 1952年11月14日、鳥取県出身。
由良育英高、神戸大丸を経て71年のドラフトで巨人に6位指名、翌年秋に入団。
1年目の73年終盤から一軍に上がり、翌年は主にリリーバーで8勝。
ローテに定着すると76年から2年連続18勝を挙げ、77年には沢村賞も受賞した。
79年キャンプ前日に江川卓との交換トレードで阪神へ。
その年22勝で最多勝と2度目の沢村賞。
83年の引退まで8年連続2ケタ勝利を挙げた。
引退後は評論家、スポーツキャスターとして人気を博し、97~01年には近鉄コーチとして01年の優勝に尽力した。
