真弓 明信

一番打者の常識を覆した男 真弓 明信

一番打者の常識を覆した男 真弓 明信

10月のAutumn Updateで新機能が追加され、ますます楽しくなったPCオンラインゲーム「プロ野球チームをつくろう!ONLINE」。 今回は〝最強の一番打者〟と呼ばれた真弓明信氏が、この世界を体験した。 「スキルでどんどんチームを強化したい」と語った真弓氏に、現役時代のエピソードもたくさん披露していただいた。

初球から打ちたい僕の打撃スタイルは一番に合っていた

特にスキルに興味を持たれたようですね。

真弓
面白い機能だね。ファンは好きなチームの選手の特性なんかもよく分かっているから、どんどんスキルを貼っちゃうんじゃないかな。阪神ファンなんて特にね(笑)。

スキルやチームカラーがあることで、チームや選手を自分好みに強化できます。

真弓
ファン球団以外の選手でも、自分のチームで使っていたら好きになりそうだ。
実際のその選手の成績も気になって、野球全体を見るようになるんじゃないかな?
(パソコンを見て)おっ、試合負けちゃったよ(笑)。
1点しか取れなかったか……。誰が打った?

楽天の山下勝充選手ですね。

真弓
彼は僕が近鉄のコーチをしていたときに一緒で、ちょうど中村紀洋がアメリカに行くという話が出てきて、山下を三塁に入れようと一生懸命鍛えたことがあったんですよ。

〝教え子〟たちもたくさん登場します。

真弓
うん、今日は打ってくれたから良かったね(笑)。
普段はなかなか見る機会のない選手もいるから、これは勉強になる。

ありがとうございます。さて、真弓さんは現役時代、一番打者として大活躍されました。打順適正などは考えられましたか?

真弓
やっぱり考えましたよ。僕はほとんどすべての打順を経験しましたからね。
自分の打撃スタイル的には、一番がもっとも合っていたと思う。1球目からどんどん積極的に打っていくタイプだったから。

初回先頭打者本塁打は通算41本。これは最初から狙う気持ちもあるのでしょうか?

真弓
狙っていたわけではないですけどね。三~五番というのは走者を還す役目でしょう。
それには球を絞って打つタイプのほうが合っていると思う。待球型というのかな。
実際、走者がいる場面では、相手も1球目からいい球は投げてこない。ボール球から入る投手が多いんですよ。だから極端に言えば、カウント1-3やフルカウントぐらいまで持って行くような打者のほうが、還す役目には向いているんです。でも、僕はそういう打ち方は好きじゃなかったからなぁ(笑)。

打者の性格で打順適正も変わる。

真弓
そういうことだね。よく、長打力があるからクリーンアップがいいとか言うけれど、そういうものじゃない。
例えば今年、巨人の高橋由伸が一番を打って活躍したでしょう。
彼も普通で考えれば、中軸のバッターだよね。でも、初球からどんどん打っていきたいタイプだから、上手く機能したと思うんだ。

一番・高橋には賛否両論ありました。

真弓
僕はいいと思いますね。
ただし、高橋を一番に置いても問題ないぐらいのクリーンアップを揃えられれば、という条件はつくけど。
還す役がいなければ機能できないし。高橋も今年、初回先頭打者弾をたくさん打ったけど、投手にとって一番難しいのは立ち上がり。ということは、裏を返せば攻撃する側にとって最高のチャンスが初回なんですよ。
相手が自分のリズムで投げてくる前に、叩いてしまえばいいのだからね。
そこで一番に一発打たれたら、精神的にもダメージは大きい。

ゲームの打順でも参考になりますね。真弓さんは一番の概念を変えたと言われました。

真弓
長打力があったり、走者を還す役目も担う一番打者は、特にパ・リーグでDH制を採用してからは増えてきてはいたんだけど、特に自分の場合は、足をケガして盗塁が難しくなってきたときに、遠くへ飛ばしてやろうという思いが出てきた。そして内野から外野へ転向した85年からは、その思いがより増したね。
長打力、機動力はどの打順でも使えるに越したことはない。ただそこで一、二番と六~八番との違いは何かといえば、すぐ後ろにクリーンアップが控えているかどうかだから。
試合が始まれば、イニングの先頭を打つのは誰でもあることだよね。

もちろんそうですね。

真弓
だから各イニングの先頭打者には、一番打者的な働きも求められるんだけれど、六番などはそこで出塁しても、確率的に生還できる可能性は低い。下位打線だからね。
でも一、二番なら二死でも出塁すれば、そこからクリーンアップへつながる。だからチームとしては、何としても出塁してほしい。そういう期待を担うのが、一番打者なんです。

特に85年の阪神は、クリーンアップの破壊力が強烈でした。

真弓
二死からでも十分、ホームに還れる可能性があったからね。
それと85年の阪神は、イメージは全然なかったんだけど、犠打がとても多かったんですよ(リーグ最多の141犠打)。僕の打点が多かったのも、例えば八番の木戸克彦が送る。そうすると九番の投手は内野ゴロを打ってもゲッツーにならないから、二死で僕にまわるんです。それで得点した。
そういう場面ごとの役割をみんなが理解していたから、極端な話、サインを見なくてもいいぐらいだったよね。

その阪神に、真弓さんは78年オフに移籍したわけですが、超大型トレードで話題となりました。心情的にはいかがでした?

真弓
嬉しかったね(笑)。通告されたとき、思わず「ありがとうございます」って言っちゃった。
チームから一人だけ出て行くのならまた気分も違ったろうけど、あのときはクラウンの西武への身売りが決まってて、どちらにせよ博多を出なければいけなかったからね。
それに当時は、セとパの人気がいまの比ではなかった。オープン戦をパ同士で戦うのと、セのチームと戦うのでは、お客さんの入りも全然違ったから。
なので阪神だからではなく、セのチームに行けるのならという感じだった。

阪神の印象はいかがでしたか?

真弓
当時はゴタゴタも多かったし、チームも弱かったから、あまり印象が良くはなかったかなぁ(笑)。
僕らとの交換相手になった田淵幸一さんが出ることでも、ちょっとゴタゴタしていたし。
でも一緒にトレードになった竹之内雅史さんなんかも「これは喜んで行かなあかんで」って言ってたよね。

博多のお客さんも熱いと言われましたが、甲子園はやはり違いましたか?

真弓
当時の博多はだいぶ熱が冷めていたんだよ。
西鉄の〝黒い霧事件〟があってチームも弱くなり、身売りという経緯があったから、人気も落ちていたんだ。
だから阪神に来て本当に驚いた。弱いときでも巨人戦だけはお客さんが入っていたから、その盛り上がりは過去に味わったことがないぐらいのものでしたよ。
ライオンズ時代に出たオールスターの比じゃなかったからね。

では最後に、真弓さんが選ぶ理想の一番打者とは、どんな選手ですか?

真弓
平均的に見れば、出塁率と機動力が当然、必要になってくるんですけど、後ろに打率のいい打者がいれば、無闇に盗塁を狙うことはない。
逆につないでいくチームであれば、一番にも長打力があれば大きな武器になる。 ただし、基本的に、一番が四番よりも本塁打を打つようでは、困るんだけれどね。 それらを踏まえた上で、現役なら誰かとなるんだけれど、やっぱり能力的にもヤクルトの青木宣親でしょう。3割5分の20本ぐらい打てて、足が速く守備もいい。
いまはどの監督も本当によく打順を変えるけど、僕なら彼を一番に固定すると思いますよ。
真弓 明信
真弓 明信(まゆみ・あきのぶ)
1953年7月12日、熊本県玉名市出身。
柳川商高から電電九州を経て、73年ドラフト3位で太平洋入り。
1年目から一軍出場を記録し、ショートに定着した78年にベストナイン。
そのオフ、田淵幸一らとの大型トレードで阪神へ移籍した。
阪神では長打力のある一番打者として活躍し、85年の日本一に大きく貢献。
一番打者の常識を覆した〝史上最強の一番打者〟と呼ばれた。
95年限りで現役引退。2051試合で打率.285、292本塁打、886打点。
00年からは近鉄のコーチを務めた。現在は評論家として幅広く活躍する。

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