矢野 燿大
2度のリーグ優勝を導いた虎の要
今回「プロ野球チームをつくろう! ONLINE2」に登場するのは、阪神の捕手として、チームを2度のリーグ優勝に導き、昨年引退したばかりの矢野燿大氏。チームの要でもある捕手としての活躍だけではなく、通算12本のサヨナラ打を放った勝負強い打者でもあった。
「野球つく」はいかがでしたか。
- 矢野
- 野球ファンの方にとっては面白いでしょうね。現実ではプロ野球チームを持つのは無理ですが、ゲームでは実現できる。いろんな球団の選手を集めたりできるというのは、楽しいでしょうね。
先ほどやっていただいたときには巨人OBの槙原寛己さんのカードを引きました。レジェンドカードと言って、OBもエントリーしていて楽しめます。
- 矢野
- 昔の選手といまの選手が対戦できるのはゲームならではですよね。
矢野さんは引退したばかりで、現役の選手との対戦はほとんど経験しているでしょうが、楽しみにしていた投手はいましたか。
- 矢野
- そうですね。楽しみというよりは対戦したかったのは同級生の野茂(英雄)ですね。野茂の社会人時代やオープン戦では対戦したとは思うんですが、公式戦ではありませんでしたから。
当時は交流戦はなかったですからね。
- 矢野
- そうですね。野茂は同級生で初めてメジャーに行っていきなり13勝するなど特別な存在でした。だから対戦してみたかったですね。また受けてみたいとも思います。どんなフォークボールを投げていたのかなと。
どちらも見てみたかったですね。矢野さんは現役時代に犠飛1本を含むサヨナラ打が12本。非常に勝負強いバッティングを披露していました。
- 矢野
- 中軸を打った時期はそんなに多くないので、サヨナラの場面で勝負をされやすいということがあったんでしょうね。三、四番だったら敬遠もあるのでしょうが。それにいい意味で開き直れていたと思います。イニングの途中でのチャンスのときの方が悪いことを考えたりしましたから。
打席に入ったときはじっくり配球を読むんですか。
- 矢野
- そうですね。捕手はほとんどそうじゃないですか。打席に入って「来た球を打とう」というのは難しいですね。捕手だから、初球どういう入りをするのか考えたり、ベンチにいても他のバッターのときにどういう攻め方をするのか見てるので、考えることが自然なんでしょうね。でもサヨナラの場面で成功したイメージはあまりないんですけど……。
98年7月7日の横浜戦(大阪ドーム)の9回裏、0対1のビハインドで二死一、二塁の場面で打席が回ってきて、相手投手は、それまで開幕から24試合連続無失点の佐々木主浩でした。そこで中越えの逆転サヨナラ二塁打を放っています。
- 矢野
- 佐々木さんは大学の先輩ですが、プロの世界では別格の方でした。当時は佐々木さんをマウンドに上げたら、試合は負けという感じでした。そのときも「フォークが来たら、絶対空振りやな」と思って真っ直ぐだけ狙っていたんですよ。
初球がフォークで打った球が真っ直ぐ。
- 矢野
- どこかで真っ直ぐが来るだろうと思っていたら2球目でしたね。たまたま打てました。負けていた場面だったので打った瞬間はサヨナラという感じではなかったですけどね。でも、このサヨナラはすごく印象に残っています。タイガースに移籍した年で、そういう意味でもサヨナラを打てたのは嬉しかったし、僕の中ではいろいろな意味がある1本でした。
珍しいサヨナラは03年6月17日の横浜戦(甲子園)、2対4で負けていた9回裏の無死満塁でデニーから逆転サヨナラ三塁打を打ちました。
- 矢野
- それもサヨナラというイメージはなかったんですよね。3ボール1ストライクで、押し出しも頭をよぎった。でも投手は絶対ストライクが欲しい場面で苦しいだろうと思い、ストライクは絶対に振ってやろうと思って打ったサヨナラでした。三塁まで走ったのは無意識でしたね。
プロ野球でもサヨナラ三塁打は通算60本(矢野氏は53本目)しかない貴重なものでした。また矢野さんは単打、二塁打、三塁打、本塁打とすべてのサヨナラを打っています。これは史上6人しかいません。
- 矢野
- そうなんですか。初めて聞きました。
一番印象に残っているサヨナラ打は?
- 矢野
- ホームランは2本なんですが、優勝した03年に横浜のギャラードから打ったものですかね(03年9月5日=甲子園)。
これも2対3からの逆転2ランですね。
- 矢野
- バックスクリーンだったし、気持ち良かったですね。サヨナラホームランは小さい頃から打った記憶がないんで、人生初だったんです。そういう意味でもすごく嬉しかったですね。
矢野さんは中日時代より阪神時代の方が捕手としての試合数は多いのですが、打者としての「読み」も研ぎ澄まされていったんでしょうか。
- 矢野
- そうですね。初めて3割を打ったのが、野村(克也)監督のときだったんですが、監督のひと言が大きかった。僕はバッティングの形にクセがあり、ストレートを狙って変化球に対応できるようなバッティングではない。そうなると読みしかないんですよ。監督には、ボールが来る前に勝負をすることを言われました。考えた球が来なくて見逃しの三振をしても、自分の中ではその前に勝負をしているので仕方がない、と割り切れるようになりましたからね。
それはもちろん捕手としてのレベルアップにもなったんでしょうが、ノーヒットノーランで2度(野口茂樹=中日、川尻哲郎=阪神)マスクをかぶっています。捕手冥利ですか。
- 矢野
- 名前が残る投手には喜んでもらえるし、そのときの捕手は「矢野だった」と言ってもらえるのは嬉しいですけど、捕手冥利ではないですね。レギュラー捕手は優勝の方が捕手冥利に尽きるんじゃないでしょうか。2人のときもそうなんですが、早くヒットを打たれてくれと思うんですよ。ノーヒットを続けていると、そちらの方に気がいって、四球でランナーを出したときなど突然崩れるケースがあるでしょ。ヒットを打たれていれば、勝つことに集中してピッチングができますからね。8回ぐらいからは達成してほしいなと思っていましたが。
先ほど優勝=捕手冥利と言われましたが、捕手の魅力とはなんですか。
- 矢野
- やはり、1球のサインで勝ち負けが決まる、ゲームを動かすという部分ですかね。僕は怖くてサインを出せないときもあったんですよ。自分で迷っているんですよね。捕手は打ち取れたらナイスリードだし、打たれたらダメなリードだし。でもちゃんとした答えがあるわけではない。だから迷うとサインを送る指が出てこなくなる。でも、そういう緊張感を味わいながら勝ったときが最高ですよね。チームが勝って、投手に「ありがとうござました」と言われるのが捕手として一番だと思います。
- 矢野 燿大(やの・あきひろ)
- 1968年12月6日、大阪市出身。
桜宮高、東北福祉大を経てドラフト2位で91年に中日に入団。98年に阪神に移籍し2度の優勝を経験。10年限りで現役を引退。通算成績は1669試合、1347安打、112本塁打、570打点、打率.274。ベストナイン3回、ゴールデングラブ2回受賞。